レクチャーノート「大原のこだわり」 大原正樹
「技を活かす知恵」
大原正樹氏のレクチャーノート第2弾です。
カードマジック主体の内容となっています。
氏の演じるマジックは、指先のスライトだけに頼らず、そのスライトがいかに手順の中に自然に溶け込むかに細かくこだわって構成されています。
そのため、一見難しそうに見える技法でもストレスなく演じることが出来ます。
さらに、どの作品もセリフの意味や盛り上げ方、エフェクトの強弱のバランスなど、演技面についても練られており、観客の反応が良いものばかりです。
―前書きより抜粋―
私が手順や技法を組み立てる際にこだわっていることに、「技法が技法に見えない状況の探求」があります。私は技法とは、いつでも使えるモジュールのようなものではなく、手順と一体となりその継ぎ目が分からないようなものであるべきだと考えています。
特定の状況に見事に溶け込んだ新しい技法を思いついたとき、また既存の技法でもそのような使い方を発見したとき、私は大きな喜びを感じます。
氏が長年に渡り蓄積し、厳選してきた「こだわり」をたっぷりとご堪能ください。
内容
Face Up Versa フェイスアップ・バーサ
シークレット・アデイションやバーサ・スイッチの代わりに使える有用なテクニッ
ク。テーブルを使わず自然な動作で、バーサ・スイッチと同様の効果を得られま
す。
Future Move Routine フューチャー・ムーブ・ルーティン
3人の観客の覚えたカードをデックに戻しよく混ぜた後、3人のカードを順番に
当てると宣言します。ところが…。演者も戸惑う現象の連続、そして意外なオチ
が待っています。パラダイム・シフトの応用マジックです。
Ohara Count 大原カウント
実際よりもカードの枚数を多く数えるフォールス・カウントです。
従来のフォールス・カウントに比べ、自然な動作でより強い錯覚が生まれます。
マジシャンが見ても技法を行ったように見えません。
Snap Across スナップ・アクロス
大原カウントと、レナート・グリーン氏の有名な技法「スナップ・ディール」を用いたカード・アクロスです。
マジシャンと観客とで10枚ずつのカードの山を持ちますが、マジシャンの山から観客の山に、3枚が見えない飛行をします。
20(微妙)
氏がスナップ・アクロスの前段で行っている「微妙に」不思議なセルフワーキング・トリックです。
20枚のカードの裏表を、観客に手伝ってもらいながらばらばらに混ぜます。
しかしカードを広げてみると、表向きのカードはすべて黒、裏向きのカードはすべて赤というように、色が完全に分離されているのです。
All Back オールバック
マジシャンはカードマジックを始めますが、誤ってダブルバックデックを持ってきてしまったことに気が付きます。
しかしカードを振るだけで1枚のカードに表面が現れ、続いて残りのカードにも全て表面が現れ、レギュラーデックになります。
大原氏による、名作のアレンジ。巧妙な改めが随所に散りばめられた作品です。
49 Cards to Pocket 49カード・トゥ・ポケット
観客の選んだ3枚のカードが次々と3箇所のポケットに移動します。
これをもう一度行いますが、最後はデックが消えて3枚のカードだけが残ります。
同じトリックをもう一度行おうとする理由付けなど、随所に構成の巧さの光る手順。すべての動作が有機的に結びついています。パラダイム・シフトの応用マジックです。
Fake Out フェイク・アウト
斬新な発想から生まれた、応用範囲の広い技法です。空のカードケースから何か
を取り出してみせる現象に使えます。
Cutter Knife カッターナイフ
観客にカードを覚えさせた後、デックをケースにしまいます。
マジシャンがこのケースにカッターナイフでおまじないをかけ、ケースを開けると、中からはカードの破片が大量に出てきます。
ところが切り刻まれていないカードが1枚だけあり、その表を見ると、観客の覚えたカードなのです。
マイケル・アマー氏のRazored Deckのバリエーションですが、フェイク・アウトを使うことによってフォースと、ケースのすり替えを不要にしました。